第一回 ジモコロ: 「会社の常識はフィクション」倒産社長の研究者に悩みを相談したら肩の荷がおりた

Web広告批評 第一回 ジモコロ: 「会社の常識はフィクション」倒産社長の研究者に悩みを相談したら肩の荷がおりた https://jimocoro.heteml.net/ch/jimocoro/entry/kakijiro55 をレビューする。

この記事広告はなんなの?

『倒産したときの話をしようか』(freee出版)の著者インタビュー。著者が倒産した経営者8人のナラティブ(語り)をまとめたもの。私は未読。本の帯は家入一真氏の推薦文。

【まずダメ出し】

2017年からクライアント表記がないぞ!ジモコロ

あのでーす。ジモコロさん。2017年を最後に記事広告の依頼主表記がないぞ。よってこの記事でも「本を売るための著者の宣伝」なのか「freee出版の宣伝」なのか不明である。 記事広告を読む上でモヤモヤするのは「誰がなんのために安くないお金を投じて宣伝してる」のかわからないこと。 なので読者としてはあった方が良いと思う。その一方で2017年から編集・構成、表記がある。 読者の方よりクライアントの方を向いているとも捉えられかねない。と言うか私はそう思う。

嫌な予感はライターから

まず倒産の話はあんまり明るくない。 ジモコロはおバカコンテンツが売り!?のサイトであるのでネガティブな内容は難しがろう。とは言っても記事広告はサイト運営者にとってめっちゃ美味しい営業案件である。 ライター選定はものすごく大変だったと思う。 以下は私の想像による営業トークである。

クライアント:「ジモコロさんに掲載するメリットってなんですかね?」 営業:「うちのサイトは明るいですよ。御社のターゲットのスモールビジネス経営者も楽しく見てもらえます。今回、お話ししてるこの倒産の本でも。。。」

クライアント:「わりとライトに読者受けしますかね」

営業:「もちろんですもちろんです。御社のこう。。。なんと言いますか、ビジネス色を少し華やかに出来ると言いますか。。。」

クライアント:「ここにライターさんの資料を頂いてるんですが、弊社のカラーに合う方はちょっといらっしゃらないかな、と思いますが」

営業:「それは、もう編集長イチオシです。柿谷と申しまして。彼がちっちゃい編プロ(編集プロダクション)の社長なんすよ。 まさに(一呼吸おく)スモールビジネスの(ドヤ顔で)当事者ですから。ターゲットです。」

クライアント:「わかりました。では見積もりと簡単なペラいちの企画書ください。お願いする方向で」

営業:「はい。3日ぐらいでお送りしますので。よろしくお願いします」

と言うわけでジモコロとしては難しい広告案件だったと思う。想像だけど。 ジモコロは元々求人サイトのオウンドメディアなので学生や求職者向けコンテンツが多い。とは言ってもアイデムのもう一つの大事な顧客はバイトを募集する経営側であるわけでターゲットとは言える。ジモコロ見てるかは知らん。

記事広告は分かりやすいウソをつく

どたまは編集長徳谷柿次郎氏が、この本を見つけたことからはじまる。いやいや営業ありきやろー、とつっこむところであるが、まあそんなものは「お約束」である。 ジモコロでの徳谷氏の記事広告案件はこれが初。なかなか難産そうなフォースが迫ってくる。

名探偵はオフィス撮影でクライアントを発見する

中心となるのは本書の関根諒介さんのインタビューである。刈り上げ、ヒゲ、ボーダーと言う「ザITベンチャーマン」と言ういでたち。 何枚の人物写真から「ITベンチャーのニンゲンを選べ」と言われたら100%当てる自信がある。 営業だとなかなかヒゲは許されないし(広告代理店ならいるかも)経歴は途中金融マンだったらしいが、今freee社で服装と容姿の自由を満喫してるところだろう。 ちなみにボーダーはかなり万能な服装で「悪い人じゃなさそう」と言う私見を持っている。フランスだとタクシー運転手はボーダーかポロシャツだった。 日本においてはポロシャツのおじさん感は激しいので、ボーダーはある意味コンサバ。 徳谷氏はオレンジのシャツだけど、袖やフォルムがワイドで、今ドキだと思う。 んで取材場所はfreeeの休憩室と思われる「畳ルーム」壁にfreeeとロゴ。 おお!クライアント、わかっちゃいました。 いや誰でもわかるけど。まあ、この「畳ルーム」もIT企業あるあるで靴を脱いでリラックス。のためのお部屋があったりする。 細かいことだが、クライアントがfreee出版で著書が関根さんってことは印税どうなってるんだろうか。 これ、会社で書いていいの?仕事なの?副業なの? 私の最大の謎は関根さんはどう言う契約で本を書いてるかである。もちろん大多数の方には関係ないけど下世話な話、お金は気になる。金融系IT、freeeだけに。

体温が低そうな著書のナラティブこそが面白い

本広告のいちばんスゴイのは著者関根氏の体温の低さ、ほんのりソシオパスじゃねえか。と言うナラティブである。 大学院で博士課程までとった同氏は「武蔵野美術大学大学院造形構想研究科の博士課程修了。倒産社長をはじめとする挫折体験者の精神的回復・ウェルビーイングを促す」研究をしていたそうである。きっかけは銀行マンだった時、倒産経験者を見ていたから、とのこと。彼なりの贖罪の旅かと思ったわたしは甘かった。以下箇条書きでつ突っ込んでいく。

・倒産経験者は語った後、ポジティブになる うう?言えないこと語ったカタルシスじゃねえの? ・諸外国では倒産はあまり気にしない 社長の個人保証が必要ないからだよ!それをさせているのは関根さん!あなたのいた銀行だよ! ・倒産の理由は人間関係が多い いやいや100%カネだから。支払いだから。 ・会社の常識はフィクション なかなか上場企業役員なら言えない発言だ。それ資本主義と会社法に喧嘩売ってるかも。

この関根さん、特別熱くもなく、もちろん熱く語られても困るが。。。火事が鎮火した後にくすぶる現場でメモ取ってるがごときナラティブ冷静クーラーっぷりである。 かなり面白い人間だと思うし、大学院で延々この種の研究していたのは事故の原因にも関わってたけど、その後の癒しもしたいと言う欲張りさんだ。そこはかとなくソシオパスっぷりが伝わるだろうか。アタマはとても良いと思うが自社freeeに対してそれを言ったら本職がジ・エンドとなるはずなのでお気をつけいただきたい。 まあ中でも最高のアゲアゲナラティブは

「そうめん」と「法人の葬式」を作りたい

である。 大丈夫だ。法人が臨死体験をすると銀行担当めっちゃくるから。貸し剥がししたら電話にでわてくれなくなるから。 そうめんはラジオ番組が作ってるぐらいなんで発注すればすぐだよ。 https://www.tbsradio.jp/event/54970/ この記事広告は何かホラーテイストがある。暗くはない。暗くはないんだ。何というかゾンビ映画におけるカタルシスみたいな。笑えるホラー臨死体験というか。 freee出版はこの関根さんの笑いながら悲劇をズコズコと爽やかに駆け抜けていく性質を世に問うただけでお金を出した意味があると思う。

星と総評

2.5 freee出版が出した記事広告はホラーテイストの爽やかコンテンツだった。よく考えるとめちゃくちゃコワイが倒産したくないけど、体験談は読んでみたい。と言うニーズには充分応えている。 そんな訳で目的は達成された。しかし関根氏が自社の上層部に向けて、倒産に向けたウェルビーイングを提案しないことを心よりお祈りして筆を置くことにする。

おまけ:freee出版は「出版社」じゃないよ

freee出版は見てみたらあくまでレーベル。書店コードを持つ法人じゃないらしい。版元はhttps://www.nippan-ips.co.jp日販アイピーエス。 何だろう。書籍信仰と言うのはあるんだろうか。ジモコロがイーアイデムのオウンドメディアで本件が営業案件で、クライアントが本を出してるのがまた営業案件と言うのは社会のややこしさを感じざるを得ない。会社って沢山必要だね!