Web広告批評 第二回 トラベルWatch は、わ、、いー

Web広告批評 第二回 トラベルWatch https://travel.watch.impress.co.jp/docs/topic/special/1404065.html

この記事広告はなに?

ハワイ州観光局によるCOVID-19 (正式名称。通称新型コロナ。他の正式名称としてはSARSs Co V2もあるヨ)も世界的に落ち着いてきたし、日本在住者よ!そろそろハワイ行こうよ、と言う趣旨の広告。 メインはクライアントの作ったムービー見てね。と言うかムービーのホテルの紹介。 ハワイ州アメリカの50番目の州で、アメリカなのにポリネシアの北端で温暖だし、島が沢山あるしってところ。既にいにしえの記憶である日本がバブルと呼ばれる好景気の時代には頻繁に日本の観光客が押し寄せていたらしい。 それにしても合衆国本国からの観光客に次いで日本在住者の観光客が多いらしいので広告も打つよね。

悲しいかな、今、第7波でスーパー円安なのよね

イャぁ。観光局には罪はない。予算があったら広告を打つ。 だけどもナウ(2022年7月29日現在)日本のCovid-19感染者はWHO認定の人口あたりNO.1になっており(うれしくない)医療も含めたインフラが絶賛崩壊中である。そんな時に海外旅行に行きたいか?と言われたら行きたいと思うけれども、人により隣都道府県移動すら厳しいので悲しいウクレレの音色が頭で鳴る。 その上、ドル以外の貨幣価値がダダ下がりしておる。日本在住者の皆さん(含むわたし)に於いては円安しか気にしないかもしれないが安心してくれ。ユーロードルもおかしなことになっている。ドルが高すぎる。 もう合衆国だけぶっちぎりにモノが高くなっていて、この記事広告掲載ホテルは一泊400ドル代、6万円近い。家族で行ったら今まで50万だった予算が100万近くになるやも知れぬ。誰のせいかは何とも言えんが世知辛い。

こたつ記事のなにが悪いのよ!ライターさんのがんばり

この記事広告は完膚なきまでに内容がない。2019年にリニューアルしたホテルの紹介。それが全て。2020年からコロナ禍でハワイのみならず観光地が大打撃を受けたこと考えると「2年間ほとんどお客さん来てないですから!ほら新品同様」と言う裏メッセージを受信する。 ライターはゆきぴゅー氏。 https://www.yukipyu.com/profile/ プロフィールによれば文章もイラストも撮影も編集もできる。ひとり編プロかよ!状態だが事実、過去記事見るに有能、万能系な方である。

多分、これはコタツ記事である。 ライターは現地行ってないし、ホテルに連絡して何かもしてないし、もしかしてハワイに思い入れすらないかもしれない。 渡されたムービーと写真で過不足なく、かつ私見ゼロで記事広告を作成する。マンション広告みたいに上げる訳でもなく、虎視眈々とクライアントが入れたいワードを散りばめまとめる。 こう言う無我の境地の記事にこそがんばりを感じる。 クライアントが「不要」と言っておるのだ。すべては仰せのままに。 こう言う無我無私の境地も職業文章書きの矜持。私はがんばりを尊敬する

こう言う記事広告は涙を禁じ得ないがライター、チェコまで行ってるし許せよ

このゆきぴゅー氏。ハワイの広告の前、プレスツアーでチェコに行ってる。記事は4回にもわたっている。 https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/tabirepo/1417326.html https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/tabirepo/1425070.html https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/tabirepo/1428459.html

プレスツアーってなんぞや?と思う方もいらっしゃろう。文字通り、メディア関係者向けのツアーなのだが最低限、交通費と宿代は出る。メシ代はものによる。担当者に連れ回されることもある。 んでもって記事にしてくださいね。載っけてね。と言うものなので凄く薄い感じで言えば現物だけ渡される広告的なこと言えなくもない。ま、広報だけど。

んで。 4回にもわたる旅行記なのだがすごい。人との触れ合いゼロ。食べ物ほんの少し。ほとんどが建物や名所、温泉である。記事広告と違い私観はあるものの見せ場が沢山ありすぎたんだろうね。大変だよね。プレスツアーもさ。 明らかに後半に行くに連れてパワーが落ちてる(イラストもなくなる)。 大事なことはこれだ。多分、これは推測だけど力作だが原稿料は安い。直行便ないし、ことばも厳しいし。 ハワイの記事広告の方がお金にはなる。コタツ記事なのに。 邪推だが編集者がゆきぴゅー氏の苦労(旅コスト当たりの原稿料)を心配し、直後にひとつ原稿料報いてあげようとハワイの広告作らせたんじゃないかな。 まあだから読者も許せよ。 私は許すよ。どこから目線かは全く不明だが。

総評と星

星一つ半

広告をレビューしてるのだか裏にあるストーリーの考察だかわからなくなってきた。まあ、この広告はひどい。が、中のストーリーを邪推するに編集者の人情は(きっと)ある。 現時点での旅の広告は「世の中が悪い」をかけらも出さずに行う。これしかねぇ。 平和が1番ですね。しばらくは来ないとしても。

第一回 ジモコロ: 「会社の常識はフィクション」倒産社長の研究者に悩みを相談したら肩の荷がおりた

Web広告批評 第一回 ジモコロ: 「会社の常識はフィクション」倒産社長の研究者に悩みを相談したら肩の荷がおりた https://jimocoro.heteml.net/ch/jimocoro/entry/kakijiro55 をレビューする。

この記事広告はなんなの?

『倒産したときの話をしようか』(freee出版)の著者インタビュー。著者が倒産した経営者8人のナラティブ(語り)をまとめたもの。私は未読。本の帯は家入一真氏の推薦文。

【まずダメ出し】

2017年からクライアント表記がないぞ!ジモコロ

あのでーす。ジモコロさん。2017年を最後に記事広告の依頼主表記がないぞ。よってこの記事でも「本を売るための著者の宣伝」なのか「freee出版の宣伝」なのか不明である。 記事広告を読む上でモヤモヤするのは「誰がなんのために安くないお金を投じて宣伝してる」のかわからないこと。 なので読者としてはあった方が良いと思う。その一方で2017年から編集・構成、表記がある。 読者の方よりクライアントの方を向いているとも捉えられかねない。と言うか私はそう思う。

嫌な予感はライターから

まず倒産の話はあんまり明るくない。 ジモコロはおバカコンテンツが売り!?のサイトであるのでネガティブな内容は難しがろう。とは言っても記事広告はサイト運営者にとってめっちゃ美味しい営業案件である。 ライター選定はものすごく大変だったと思う。 以下は私の想像による営業トークである。

クライアント:「ジモコロさんに掲載するメリットってなんですかね?」 営業:「うちのサイトは明るいですよ。御社のターゲットのスモールビジネス経営者も楽しく見てもらえます。今回、お話ししてるこの倒産の本でも。。。」

クライアント:「わりとライトに読者受けしますかね」

営業:「もちろんですもちろんです。御社のこう。。。なんと言いますか、ビジネス色を少し華やかに出来ると言いますか。。。」

クライアント:「ここにライターさんの資料を頂いてるんですが、弊社のカラーに合う方はちょっといらっしゃらないかな、と思いますが」

営業:「それは、もう編集長イチオシです。柿谷と申しまして。彼がちっちゃい編プロ(編集プロダクション)の社長なんすよ。 まさに(一呼吸おく)スモールビジネスの(ドヤ顔で)当事者ですから。ターゲットです。」

クライアント:「わかりました。では見積もりと簡単なペラいちの企画書ください。お願いする方向で」

営業:「はい。3日ぐらいでお送りしますので。よろしくお願いします」

と言うわけでジモコロとしては難しい広告案件だったと思う。想像だけど。 ジモコロは元々求人サイトのオウンドメディアなので学生や求職者向けコンテンツが多い。とは言ってもアイデムのもう一つの大事な顧客はバイトを募集する経営側であるわけでターゲットとは言える。ジモコロ見てるかは知らん。

記事広告は分かりやすいウソをつく

どたまは編集長徳谷柿次郎氏が、この本を見つけたことからはじまる。いやいや営業ありきやろー、とつっこむところであるが、まあそんなものは「お約束」である。 ジモコロでの徳谷氏の記事広告案件はこれが初。なかなか難産そうなフォースが迫ってくる。

名探偵はオフィス撮影でクライアントを発見する

中心となるのは本書の関根諒介さんのインタビューである。刈り上げ、ヒゲ、ボーダーと言う「ザITベンチャーマン」と言ういでたち。 何枚の人物写真から「ITベンチャーのニンゲンを選べ」と言われたら100%当てる自信がある。 営業だとなかなかヒゲは許されないし(広告代理店ならいるかも)経歴は途中金融マンだったらしいが、今freee社で服装と容姿の自由を満喫してるところだろう。 ちなみにボーダーはかなり万能な服装で「悪い人じゃなさそう」と言う私見を持っている。フランスだとタクシー運転手はボーダーかポロシャツだった。 日本においてはポロシャツのおじさん感は激しいので、ボーダーはある意味コンサバ。 徳谷氏はオレンジのシャツだけど、袖やフォルムがワイドで、今ドキだと思う。 んで取材場所はfreeeの休憩室と思われる「畳ルーム」壁にfreeeとロゴ。 おお!クライアント、わかっちゃいました。 いや誰でもわかるけど。まあ、この「畳ルーム」もIT企業あるあるで靴を脱いでリラックス。のためのお部屋があったりする。 細かいことだが、クライアントがfreee出版で著書が関根さんってことは印税どうなってるんだろうか。 これ、会社で書いていいの?仕事なの?副業なの? 私の最大の謎は関根さんはどう言う契約で本を書いてるかである。もちろん大多数の方には関係ないけど下世話な話、お金は気になる。金融系IT、freeeだけに。

体温が低そうな著書のナラティブこそが面白い

本広告のいちばんスゴイのは著者関根氏の体温の低さ、ほんのりソシオパスじゃねえか。と言うナラティブである。 大学院で博士課程までとった同氏は「武蔵野美術大学大学院造形構想研究科の博士課程修了。倒産社長をはじめとする挫折体験者の精神的回復・ウェルビーイングを促す」研究をしていたそうである。きっかけは銀行マンだった時、倒産経験者を見ていたから、とのこと。彼なりの贖罪の旅かと思ったわたしは甘かった。以下箇条書きでつ突っ込んでいく。

・倒産経験者は語った後、ポジティブになる うう?言えないこと語ったカタルシスじゃねえの? ・諸外国では倒産はあまり気にしない 社長の個人保証が必要ないからだよ!それをさせているのは関根さん!あなたのいた銀行だよ! ・倒産の理由は人間関係が多い いやいや100%カネだから。支払いだから。 ・会社の常識はフィクション なかなか上場企業役員なら言えない発言だ。それ資本主義と会社法に喧嘩売ってるかも。

この関根さん、特別熱くもなく、もちろん熱く語られても困るが。。。火事が鎮火した後にくすぶる現場でメモ取ってるがごときナラティブ冷静クーラーっぷりである。 かなり面白い人間だと思うし、大学院で延々この種の研究していたのは事故の原因にも関わってたけど、その後の癒しもしたいと言う欲張りさんだ。そこはかとなくソシオパスっぷりが伝わるだろうか。アタマはとても良いと思うが自社freeeに対してそれを言ったら本職がジ・エンドとなるはずなのでお気をつけいただきたい。 まあ中でも最高のアゲアゲナラティブは

「そうめん」と「法人の葬式」を作りたい

である。 大丈夫だ。法人が臨死体験をすると銀行担当めっちゃくるから。貸し剥がししたら電話にでわてくれなくなるから。 そうめんはラジオ番組が作ってるぐらいなんで発注すればすぐだよ。 https://www.tbsradio.jp/event/54970/ この記事広告は何かホラーテイストがある。暗くはない。暗くはないんだ。何というかゾンビ映画におけるカタルシスみたいな。笑えるホラー臨死体験というか。 freee出版はこの関根さんの笑いながら悲劇をズコズコと爽やかに駆け抜けていく性質を世に問うただけでお金を出した意味があると思う。

星と総評

2.5 freee出版が出した記事広告はホラーテイストの爽やかコンテンツだった。よく考えるとめちゃくちゃコワイが倒産したくないけど、体験談は読んでみたい。と言うニーズには充分応えている。 そんな訳で目的は達成された。しかし関根氏が自社の上層部に向けて、倒産に向けたウェルビーイングを提案しないことを心よりお祈りして筆を置くことにする。

おまけ:freee出版は「出版社」じゃないよ

freee出版は見てみたらあくまでレーベル。書店コードを持つ法人じゃないらしい。版元はhttps://www.nippan-ips.co.jp日販アイピーエス。 何だろう。書籍信仰と言うのはあるんだろうか。ジモコロがイーアイデムのオウンドメディアで本件が営業案件で、クライアントが本を出してるのがまた営業案件と言うのは社会のややこしさを感じざるを得ない。会社って沢山必要だね!